ワイルドシルクについて ー 野蚕の特性
■野蚕絹の種類と特性 ■シルクの機能性と取り扱い
野蚕絹とは
絹織物は虫の吐く糸から作っています。その中でよく知られている白い繭を作る虫を家蚕といって、5,000年以上前から中国で飼われはじめ、工夫を重ねて、虫の家畜化に成功したもので、とてもしなやかで美しい糸を採る事が出来ます。
ところが世界の野山には、みの虫のように袋状の巣を作っているものが沢山います。それぞれ上手に住み分ける為に虫によって食べる葉が違います。また繭の形や大きさ、色なども様々です。これを総称して野蚕と言います。
野蚕絹とその特性
これらが全て糸として利用されているわけではなく、蛹を食べることを種としているものや、害虫として駆除されるものもあります。
昨今では蜘蛛の糸、蜂の巣や貝絹など地球上のシルク蛋白質を作る生物を野蚕の範疇に入れ医療分野を始め幅広く研究が進んでいます。
糸質は一般的に家蚕より太く、独特の艶があり、軽くてシャリ感があるなど野趣に富んだ風合いが好まれ、中でも天蚕やムガ蚕は大変高価です、ただエリ蚕はカシミアのように柔らかく、伸縮性に富んだ糸になります。
機能性の面でも抗菌性、防紫外線性、保温放温、保湿放湿性、防臭性、緩衝性、など人の肌との親和性に富み、幸せホルモン分泌を促す優れた繊維です。
健康維持に役立つばかりか、これらの虫の育つ環境が人類、哺乳類にとって最も良い環境でもあります。
絹糸昆虫のいろいろ
カイコガ科 | カイコ(家蚕)、クワコ(桑蚕) |
ヤママユガ科 | テンサン(天蚕)、サクサン(柞蚕)、ムガサン、タサールサン、エリサン、シンジュサン、ヨナグニサン(与那国蚕)、ウスタビガ、クスサン、ロスチャイルドヤママユガ、アタカス、クリキュラ(黄金繭)、アゲマ |
カレハガ科 | マツカレハ、バキバサ、ゴノメタ、ボロセラ |
シロチョウ科 | スゴモリモンシロチョウ、ミヤマシロチョウ |
ギョウレツケムシ科 | アナフェ |
ミノガ科 | オオミノガ、チャミノガ |
現在使われている代表的な繭の紹介
ヤママユガ科
天蚕(ヤママユ)
産 地:日本各地
食 性:クヌギ、ブナ、など広葉樹の葉
繭の色:淡いグリーン
糸の色:グリーン・きなり
特 性:シャリ感がある。光を乱反射吸収し、品の良い独特の艶がある、多孔質繊維
利 用:高価で主に和装用、ショール等にも利用
柞蚕(サクサン)
産 地:中国北東部
食 性:樫などの広葉樹の葉
繭の色:うす茶
糸の色:うす茶
特 性:シャリ感がある。光を乱反射吸収し、品の良い独特の艶がある、多孔質繊維
利 用:古くから和装材に利用、今日では、ニットなどに多用
タサール蚕(タッサ)
産 地:インド北東部(種類が多い)
食 性:樫系広葉樹の葉
繭の色:茶〜グレイ
糸の色:うす茶。繊度は太く節がある
特 性:シャリ感がある。光を乱反射吸収し独特の光沢がある、多孔質繊維
利 用:インドシルクとして親しまれ、ショールから洋服、インテリア用品にまで世界中で幅広く使われている
ムガ蚕
産 地:インド アッサム地方
繭の色:淡茶
糸の色:ゴールド、うす茶
特 性:気候によって発色が異なるが精練糸になると金色を発し、希少価値で高価。
利 用:ショール、服地、帯など和装用布
アタカス蚕(与那国蚕)
産 地:インドネシア、タイ、日本(与那国)等
繭の色:濃茶〜グレイ
糸の色:茶
特 性:シャリ感がある、多孔質繊維
利 用:つむぎ糸にしてショール等
今後の利用期待
クリキュラ(黄金繭)
産 地:インドネシア、フィリピン、インド等
繭の色:黄金
糸の色:うす黄
特 性:紡ぎ糸のみ利用、しなやか、多孔質繊維
しなやか、多孔質繊維
利 用:金色の繭を利用した壁紙、小物
エリ蚕(ヒマ蚕)
産 地:インド北部〜ベトナム〜中国南部
繭の色:白・赤茶(極少量)
糸の色:きなり。
特 性:紡ぎ糸のみ利用、しなやか、多孔質繊維
利 用:マフラー、シーツ・毛布、綿との混紡にて肌着など
カイコガ科
家蚕
産 地:世界各地
繭の色:白、黄色
糸の色:白
特 性:均一で加工し易い、緻密性繊維
利 用:和服、ショールなど絹製品の殆どのもの