絹のマクラを作る
絹枕使用体感
家蚕枕
先日、絹から高血糖値を下げるサプリメントを作って
いる会社から絹の残綿の有効利用はないかと相談を受け、
早速、複数の絹加工会社にサンプルを送り、検討を依頼
しましたが、繭の色々な部分が混じり、桑葉の小片、草
木の小枝なども混入し、通常の状態ではないので、精練
やカードなど、手間をかけても歩留まりも悪く、一般的
な絹紡糸を作る事は不可能な事が判りました。
そこで糸〜織物という発想を捨て、開繭されて適当に切
断され綿から手でゴミを取り除きカードして絹綿を作り、
絹綿100%の枕を試作して使ってみました。
頭を枕に乗せるとフワっと耳の近くまで周りの綿が盛り
上がり、それでいて頭の着枕部分はそれほど沈まず、綿
が分かれず、柔らかーい暖かさに包まれ、その暖かさは
耳の下から喉を伝わり肩まで包み込んでくれます、その
感触の良さは筆舌し難いものがありました。深い眠りに
つけた事はいうまでもありません。半年来右肩の凝りが
ひどくなり、うっとうしい毎日が続いていましたが、翌
朝、肩こりが消えているのにビックリ。身体の動きも何
となく軽やかに感じたのです。常に野蚕絹のシーツと下
着上下を着て寝ていて、絹の肌触りには慣れていると思
っていましたが、また新たな絹の感触と機能性の恩恵に
出会いました。
絹と活性酸素
今まで絹は薄く使われて来ましたが、上記の枕の様に
あまり加工を施さず、厚く使う事で絹が人体にどの様な
機能性を発揮するのか調べてみる必要を痛感しました。
絹は保温、保湿効果により血行促進をする事はよく知
られていますが、それだけではこの劇的な肩こり解消は
説明出来ません。
家蚕絹フィブロイン(通常の糸に使う部分)は20種類
のアミノ酸(体外から摂取しなければならない9種類の
必須アミノ酸と体内でつくられる11種類の非必須アミノ
酸)で構成されていますが、その中に0.2%のシスチン
(非必須アミノ酸)、0.1%のメチオニン(必須アミノ酸)
が含まれ、それが毒性の強い活性酸素の電子を吸着して
中和するので肩こりを癒してくれる一因だろうと考えま
した。
活性酸素とは
大気中に含まれる酸素分子がより反応性の高い化合物
に変化した分子や元素の電子などの量子をいいます。
人はこれがないと生きて行けませんが、活性酸素が過剰
になると毒性が強くなり、その電磁波を中和しなければ
老化をはじめ様々な病気や癌の要因になると考えられて
います。一口に活性酸素と言っても9種類ありそれらの
毒性を中和する物の中には緑黄野菜や魚(青魚)介類が
あります。それらにはビタミンCやE、カルチノイド、
ホリフェノールなどの抗酸化物質が多く含まれます。
ところが食品や人が持つ酵素では中和出来ない活性酸素
が有り、絹のアミノ酸は体外から少しではあるがそれを
を中和しているのではないかと思した。
絹の枕が気持ちが良いわけ
1)細繊度と柔らかさ
絹の糸は繊維が細く、絹糸を構成しているアミノ酸の
60%を占める軟結晶部分が空気や水分を溜池の様に調
整し、保温、放温、保湿、放湿を人体に沿うようにコ
ントロールしているので、しっとりした安堵感のある
柔らかい肌触りを感じ、幸せホルモンの分泌につなが
ると思われます。
2)空気
細い繊維の束の中に沢山の空気が含まれます。
さらに絹の軟結晶に含まれる空気と繊維の多孔質(野
蚕のみ)間の空気が三重構造になって気持ちの良さを
増幅しています。
長期使用していると糸間の空気が減少して気持ちの
良さも減少して来ます。その時は枕の綿を手打ちし
て空気を入れて下さい。元に戻ります。
手打ちには時間がかかりますが、絹の糸間を通った
空気を吸うことは広葉樹林の森林浴効果が期待でき
気持ちが落ち着きます。
3)アミノ酸の機能性
絹は人と同じ20種類のアミノ酸(人と絹ではアミノ
酸の構成比は異なります)は親和性に優れていて肌
になじみます。
シルク(家蚕)のアミノ酸の40%強を占めるグリシ
ン(野蚕は20%~30%)は神経伝達物質でオキシト
シン(幸せホルモン)の分泌を促し、安眠効果をも
たらします。
但し、これらは人の体内にあっての効果であって、
体外から体内と同じ効果は期待できないと思います
が、他の繊維では感じられない気持ちに良さはアミ
ノ酸効を考慮しなければ説明ができません。
4)絹鳴り
枕の中の細い繊維は頭が動くと繊維同士がずれて絹
鳴りの音を発していると思われます。この音は耳に
は聞こえず皮膚が感じる音です。(但し、糸の精錬の
仕方でシュシュという音を発する事があります)こ
の音も気持ちを癒してくれるのではないでしょうか。
琵琶など和の弦楽器はこの聞こえない音を利用して
いるのでしょうか。
*ご注意!枕は丸ごと洗濯しないで下さい。綿は洗い
ません。洗うと絹綿が硬くなってしまいます。
打ち直しをします。
絹の残布などでカバーを作りそれを洗うよう
にお勧めします。
エリ蚕枕
柞蚕枕