絹ってどんな繊維

2020-02-08

今日迄、色々絹の話を書いて来ましたが、絹がどんな

繊維なのか冒頭にお話すべきでしたが、そのつど話しを

進める上で必要な事を述べて来て、定かにしていません

でした。改めてお話してみましょう。

絹の成分

絹は天然繊維の中で綿や麻の様なセルローズ系の繊維

ではなく、ウールと同じような蛋白系のアミノ酸鎖で出

来た繊維です。その蛋白質も球状蛋白質ではなく真っす

ぐに連なる繊維状蛋白質で、セリシン、フィブロインと

いう2種類から構成されています。他にロウ質、炭水化

物などがほんの少々混じった特異な繊維です。

絹の蛋白質

セリシンとフィブロインは同じ蛋白質でありながらア

ミノ酸の種類と結合の順序が違うので、物理的、化学的

、生理的機能の違いが生じます。

セリシンのアミノ酸組成はセリンが1/3で水と親しみや

すいスレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などで

70%威以上を構成している水に溶けやすい成分です。

フィブロインは分子量の小さいグリシン、アラニン、セ

リンなどで占められているので強く縦に結びついていて

強靭で伸縮性があります。

野蚕ではアラニンの方が多いといった違いがあり、蛋白

質の結晶の化学構造も異なるので、強度や各種機能性、

染色性の違いが出て来ます。この事が染織家に野蚕染ま

らないと云われる所以です。

絹糸の構造

1本に見える絹糸は蚕の体内にある左右1対の絹糸腺

から出された2本のフィブロインがセリシンで覆われた

ものです。

セリシンは水やアルカリに溶けやすい順に4層になって

フィブロインを包んでいます。

その割合は繭の種類によって異なりますが、家蚕ではセ

リシンが20%30%,フィブロインが70% 80%です。

セリシンを取り除く事を精練といって、きれいに精練す

れば滑らかなシホン地の様になり、なん部練りにするか

でシャリ感が出てきたり、生地の風合いや感触が違って

来ます。こうした加工の違いで絹が麻の様にもなりフワ

フワ、スベスベの柔らかい繊維にもなるゆえんです。

フィブロインは1000本のフィブリルの束から出来てい

て、さらにそのフィブリルは900本のミクロフィブリル

から構成されており、ミクロフィブリルは350本の分子

が縦に繋がって作られていて、それぞれが規則正しく縦

方向に並んだ結晶領域と不規則な並び方の非結晶領域が

4:6の割合で出来たものです。

これが絹の性質を決定づけている大きな要因です。

結晶部分の分子は強く引き合い、凝縮しようとするので

引っ張る力には鋼鉄より強いといわれ、弾力性に富んで

います。

非結晶部分は分子の並びがアットランダムなので伸縮性

があり柔らかく、不規則の分子の間に水分も多く吸収で

きるので吸湿性にも優れていて、吸湿する時発熱するの

で絹を着て暫くすると体が温まるという保温効果(空気

を含むというもう一つの理由もある)を発揮し、一定の

湿度を吸収すると放湿を始めるという溜池的な機能を果

たしています。放湿の時発生する気化熱は上がり過ぎた

温度をさますという役割を果たしています。

この様なわけで絹を着用すると品よくほのかに暖かく、

蒸れなくてべとつかなく、気持ちがよいというわけです。

こうした絹を構成する分子の幾種類もの親水基は絹の優

れた染色性にも寄与しています。

この様な糸の構造は繰り返し摩擦が加わると、フィブ

ロインが竹を割った様に裂かれフィブリルが枝毛になっ

て現れます、更に摩擦が繰り返されるともっと細いミク

ロフィブリルも裂けて湯気の様な繊毛を発生させます。

ですから、絹のもみ洗いは避けて下さいという理由です。

また、シャリットしたセリシンが多く含まれた絹を洗う

時はセリシンがニカワ質的蛋白質なので高温で洗濯をす

ると親水性と相まって水に溶け出してしまいます。

絹を長持ちさせるためには30℃以下の水で洗濯すると

よいといわれるわけです。

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