絹の健康利用
シーツ、毛布を作る
絹の機能性利用活発化による絹新利用
20年位前「食べる絹」が発表されてより、各研究機関
で急速に絹の機能性が研究され始め、昨今では絹入り化
粧品、石鹸、サプリメント、人工骨、下着等々活発な開
発が進んで来ました。
絹は表面25%前後がセリシンと云う蛋白質で、芯に当た
る部分の75%位がフィブロインといわれる蛋白質です。
一般的にはセリシンを除いてフィブロイを絹として利用
し、セリシンは産業廃棄物にされていました。
ところが捨てられていたセリシンの方がより諸機能性が
高いことが判って来て、医薬品など医療関係利用に研究
が盛んになって来ました。
また、蚕は医薬品開発の基礎実験動物として利用し始め
ました。
健康用品 タサール蚕(野蚕)糸でシーツを作る
美容、健康、機能性などの言葉は若年層のみならず、
老若男女誰もが敏感に反応する時代になって来ました。
そこで、以前から何度も製作したタサール蚕のシーツを
機能性という観点から製作し、着用実験を試みました。
結果は一般に売られている家蚕のシーツより野蚕のシー
ツの方がより軽く、柔穏やかな眠りを誘ってくれること
が判りました。『竜宮にいざなわれる様な気持ち』
なぜ、タサール蚕糸のシーツは快適か
タサール蚕はインド東北地域に生息するヤママユガ科
の野蚕で、近似種に日本の天蚕、中国の柞蚕があります。
絹を作る生物は地球上に10万種類もいるといわれますが
多孔質繊維を作る生物はヤママユガ科の昆虫のみです。
タサール蚕の絹糸の20%強を孔(穴)が占め、その空
間が保温、保湿を貯水池のように、体温、発汗に合わせ
て調節しっていると推測されます。
その温度、湿度は繭の中で身動き出来ない蛹を安全に一
定期間保護するゆりかごの役目を担っていて、人も絹に
覆われると、べたつかず(蒸れず)、体温を超えず、下
がらず、快適と云うわけです。
さらに、家蚕も同じですが、シルク蛋白質はアミノ酸
の結合が固結合の部分と軟結合の部分が有り、6割を占
める軟結合の部分が温度、湿度の貯水槽の役目を果たし
ているので快適なのですが、野蚕のシーツは家蚕のそれ
よりも多孔質ゆえんの快適性が顕著であると思われます。
もう一つ忘れてならない事は、シルクの蛋白質は必須
アミノ酸で人の肌によく馴染む親和性に富んでいて、肌
に異和感を覚えさせず、より安心感を満たしてくれます。
加えてシルクは抗菌性に優れているので、アンモニア
を作る雑菌などの繁殖を抑制し、防臭性に富んでいます。
その様な四つの条件によりタサール蚕糸で作ったシーツ
は気持ちが良いという訳です。
エリ蚕糸の毛布を作る
エリ蚕はインドアッサム原産の野蚕の仲間ですが、繭
がフワフワ柔らかいので糸も張がなく、カシミアタッチ
の絹で、繊維長が短く生糸は採れませんので、絹紡糸と
して利用されますが、絹の付加価値である長繊維でなく、
特有の艶が鈍いので、絹素材の中では最も安価です。
柔らかいので伸縮率も大きく従来の絹織物的発想では上
手な利用が出来ません。
色々な物を作ってみましたが、失敗作が多く、厚手のシ
ョールなどにはむいている事が判りました。
そこで柔らかさを利用した毛布を試作しました。
糸足の長いフワッとしたものを作ろうと思いましたが、
長期使用後、糸が寝てしまう恐れがありましたので、パ
イル状のシーツにしました。やや加工賃は高くなります
が、形状変化が起こらず、高級感が増して大変よい物が
完成しました。
野蚕ですので多孔質な糸ですが、孔の数がタサール蚕に
比べて10%未満なので、多孔質ゆえんの機能性は劣ると
思われます。しかし、細くて柔らかい糸の間の空気がそ
れをカバーし、感触はタサール蚕のシーツとは違った、
しっとりした穏やかな安堵感に包まれます。
夢のムガ蚕糸のシーツ
インドアッサム州でしか採れないムガ蚕繭の糸は細く、
軽くて黄金にかがやき、野蚕糸の中では最も多くの孔(
600前後)を持つ多孔質の繊維です。
実験では『母親の胎内に居る』かと思われる様な気持ち
になります。
なんとかしてこの素材でシーツを作り一人でも多くの人
に利用して頂く機会を作りたく今後も努力して行きます。
自然素材の持つ機能性を上手に利用する事が省エネであ
り、環境保護に役立つのではないでしょうか。